【読了】『笑うマトリョーシカ』
2025.07.07
話の構成や意外な展開などは間違いなく面白い。
忘れたころにやってくる「え、この人こんなんやったん」という展開に何度も飲み込まれました。作家さんの話の構成力ってほんまにすごいです。
テーマは「人間は演じきれるのか?」みたいな話。
政治家を志す清家は、高校の生徒会長の選挙の時に見事に演じきった。
ブレーンのいう通りに。
そのブレーンなくして彼の政治家としての成功もなかっともいえる。
でも、そのブレーンと衝突し彼自身で何かを行っている時はなんか変。というか生身の彼が出てきている。
と思いきや、実はそれもすべて演じきっているだけのこと。もっと言えば、高校時代から演じきっているからそのブレーン自身も騙されていた、ともいえる。
そんな演者がなんにんか絡むと、もう何が真実なのかがさっぱりわからない。というのが正直な感想です。
最後のクライマックスのシーンで演じ切ることで人をコントロース仕様とする人(マニピュレーター)が集まるのだが、全員の独白を聞いているとすべてが嘘に聞こえてくる。
そして何を信じたらいいのかわからなくなる。
だから誰かをしんじちゃう。
人を熱狂させるカリスマって一歩ずれるとこういう事なのかもな、とか思いました。
個人的には大手の新聞社に勤める道上さんが先輩について独立し、この闇を暴いていくのが気持ちいい。
道上さんは非常の聡明な女性なのですが、だからこそこの闇に触れると気持ち悪さを露わにしていく。
その反応はまさに私も感じるところだし、多くの読者が共感するところ。
そう考えると読者の変わって闇に触れている道上さんに私たちは共感することでこの話を理解しているのかもしれません。