Know-How ノウハウ

【読了】『ネメシスの使者』

2025.04.27

壮大などんでん返しを最後にくらわされ、中々爽快な本。
テーマは結構重い。ネタバレになるのでさわりだけですが、簡単に言うと殺人事件を起こした犯人は死刑じゃなくて懲役で服役している。つまり生きながらえているのに、被害者の家族は一生大事な人を失った苦しみを味わい続け、世間からも色々言われたりする。それは不公平だ!と義憤で犯罪者の家族を殺すのはどうなの?というテーマ。

私も含めて一般大衆の心理ってこわいなと感じるのは、その犯罪加害者を殺した犯人が世間では賞賛されること。
つまり、司法でも鉄槌を加えられなかった犯罪加害者の家族に復讐という鉄槌を食らわせている犯人はえらい、みたいな論調が生まれていく。
犯罪であることには変わらないのに、被害者の家族の心情を自らが代弁しているかのようになり、それに酔って行く。

という怖さも感じるが、本書の面白いところはそこではない。(私は)
万年警部どまりの渡瀬の人たらしっぷりが面白い。
上司を懐柔し、コントロールする。検察のキーマンすら懐柔しコントロールする。
犯罪加害者の娘すら懐柔していく。
その人たらしっぷりはテクニックではなく、絶対に犯罪は許さないという強い信念と、心のそこで相手を思いやる優しがが垣間見られるから生まれていえるよね、ともいえる。
そして本気でこの犯罪に向き合った渡瀬と検察の岬。
不器用な二人の真剣さがぶつかる中である種の仲間意識が生まれ信頼関係が生まれていくその描写は、おっさんの心をくすぐってくれる。
そんな素敵なおっさんの話だと思って読む方が面白いです。