【読了】『イラク水滸伝』
2025.02.18
はっきり言って超面白い!
イラクにある湿地帯に住む民族の暮らしや習慣に迫るというドキュメントなのだが、そのスタイルがガチすぎて面白い。
単に取材とかではなく、現地の人と仲良くなり、一緒に暮らし、一緒に旅をし、一緒に笑う。
そもそもこんな広大な湿地帯があることも私は知らなかったし、湿地帯で生きている民族がいることも初めて知りました。
そしてそこに突撃し(もちろんコネなどもあるが)、歓迎され、ご飯を一緒に食べ水牛と暮らす。これは中々できない。
そしてその民族は小学生の時にならったメソポタミア文明からの機嫌だというのだから、歴史のスケール感、地理的なスケール感が深くて広くて面白すぎました。
湿地帯に住む人たちは、湿地帯で撮れる獲物をとり暮らす。
飼っている水牛の乳でチーズなどを作り、食べ、売る。
葦を刈り、家を作り、それを売り、暮らしている。
湿地帯で手に入らないものは街に出て買う。
スーパーSDGsな暮らしを体現している。
なんていうか、自分の知らない事に突撃していくさまが面白すぎました。
ただ、途中で著者が言っていた言葉が印象的。
「イラクをほかの途上国より高く評価しては、ハイダル君やその家族、知人からひんしゅくを買う」という情けない失敗を繰り返していた、ということ。
彼らはアフリカではなく、アメリカや日本などと比較してくれとはいう。というのも、イラクにはしかりと秩序があり、物乞いをされたり法外な金銭の要求をされたり、ということは全くない。
なのですが、私たちはつい内戦が長く続いていることやメディアの報道から、「イラクは大変な国」という思い込みがある。
そう、なめているということ。
でも、実際は知的で秩序のある国。そして人は優しくウエルカム。
偏見って怖いよね、と改めて。
非常の長編ではあるが、意外とあっさり読めます。それくらい臨場感があり、愉快な気分になる本でした。